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ヨーロッパのテラス席から考える|なぜ日本はテラス席が発達しなかったのか?

ヨーロッパには、カフェやレストランのテラス席が多く

天気の良い日はもちろん、少し肌寒い日でも、外の席でコーヒーを飲んだり、食事をしたり、会話を楽しんだりしています。

「ヨーロッパは気候が良いから、外で過ごしやすいのだろう」

と思っていました。

気温や湿度、雨、日照時間などの違いはあると認識しています。

しかし、各地のテラス席を見ていると、気候だけでは説明できない違いも感じました。

ヨーロッパの一部の地域には、

「外で過ごす時間は気持ちが良い」

「街や緑を眺めながら過ごすことには価値がある」

という感覚が、暮らしの中に根づいているように思います。

今回は、ヨーロッパのテラス文化から、日本の住宅庭を「眺める場所」ではなく「過ごす場所」にするための考え方をご紹介します。

この記事を書いた人
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堀尾 憲司

ヨーロッパのテラス席は、もう一つの居場所

ヨーロッパのテラス席では、特別なイベントが行われているわけではありません。

一人でコーヒーを飲む。

夫婦や友人と話をする。

本や新聞を読む。

犬を連れて休憩する。

食事をしながら、通りを行き交う人や街並みを眺める。

そのような日常の時間が過ごされています。

日本で「屋外で食事をする」と聞くと、バーベキューやパーティーなど、大人数での特別な行事を想像する方も多いのではないでしょうか。

庭で過ごすために、必ずしも大きなテーブルや屋外キッチンが必要なわけではありません。

折り畳み椅子が一脚あり、飲み物を置ける小さなテーブルがあれば、そこは一人で休める場所になります。

大切なのは、設備の豪華さよりも、

「ここに座って過ごしたい」

と思える居場所があることです。

気候の違いは、庭の使い方にも影響する

日本で庭が使われにくい理由の一つに、気候があります。

春は過ごしやすいものの、しばらくすると梅雨が来ます。

夏は気温だけでなく湿度も高く、日なたでは長時間過ごせません。

秋は気候が良くても、日が暮れるのが早くなります。

蚊や虫、突然の雨、台風なども考える必要があります。

そのため、ヨーロッパの庭やテラスを、そのまま日本へ持ち込めば快適になるわけではありません。

日本の庭では、

  • 夏の日差しを遮る木陰やシェード
  • 風が抜ける位置
  • 雨水がたまらない排水計画
  • 蚊や虫が発生しにくい環境又は蚊除け対策
  • 夕方から使える照明
  • 暑くなりにくい床材
  • 屋外家具を片付けられる収納

など、その土地の気候に合わせた工夫が必要です。

庭を使えるかどうかは、広さよりも「不快な条件をどこまで減らせるか」で変わります。

日本の庭づくりは、困りごとから始まることが多い

日本で庭のご相談を受けていると、

「雑草をなんとかしたい」

「落ち葉の掃除を減らしたい」

「虫が来ないようにしたい」

「外から見えないようにしたい」

「植物の手入れをなくしたい」

というご要望をよく伺います。

これらは、どれも庭を使ううえで大切な問題。

雑草が伸び、蚊が多く、周囲から丸見えでは、庭へ出たいとは思えません。

ただし、困りごとをなくすことだけで計画を進めると、庭全体がコンクリートや防草シートで覆われ、きれいにはなっても、そこで何をしたらよいのか分からない場所になることがあります。

雑草をなくすことは、庭づくりの目的ではありません。

雑草の手入れに使っていた時間を減らし、その庭で過ごせるようにする。

そこまで考えて、初めて庭の価値につながります。

緑は「管理するもの」だけではない

日本では、庭木や街路樹について、

  • 落ち葉が出る
  • 虫が来る
  • 枝が越境する
  • 剪定コストがかかる
  • 大きくなると危ない

といったマイナス面から考えることがあります。

確かに、植える場所や樹種を間違えれば、将来の管理負担は大きくなります。

成長後の大きさを考えずに植えたり、建物や隣地に近すぎたりすれば、強い剪定を繰り返すことにもなります。

一方で、適切に育った樹木には、

  • 木陰をつくる
  • 周囲からの視線をやわらげる
  • 風や葉の音を感じさせる
  • 鳥や生き物が訪れる
  • 住宅と庭を景色としてまとめる
  • 夏の暑さをやわらげる
  • 地域の景観が良くなる

といった役割があります。

街路樹の研究でも、強く剪定された樹木より、自然な樹形で育った樹木の方が住民市民から高く評価され、落ち葉などの問題も許容されやすい傾向が報告されています。

良い緑の姿を知れば、落ち葉だけではなく、木陰や景観の価値も見えるようになるのかもしれません。

だからこそ庭木は、単に「植える・切る」ではなく、将来どのような姿に育てるかまで考えて計画することが大切です。

(小牧市の市民会館通りは街路樹が多くて好きです)

庭にテラスをつくるだけでは、使われる庭にならない

庭を使いたいと考え、ウッドデッキやタイルテラスをつくる方も増えています。

しかし、テラスを設置すれば、自然と庭を使うようになるとは限りません。

実際に使う場面を想像すると、次のような点も重要です。

室内から出やすいか

出入り口から遠かったり、庭へ出るために靴を履き替えて建物を回り込んだりする動線では、次第に使わなくなります。

飲み物や食事を運ぶのであれば、リビングやダイニングとのつながりも考える必要があります。

座った場所から何が見えるか

椅子に座った正面に、物置や隣家の室外機が見える状態では、落ち着いて過ごしにくくなります。

反対に、植栽や空、愛犬が遊ぶ姿などが見えると、座っている時間そのものが楽しくなります。

庭は上から見た平面図だけではなく、「座った人の目線」で考えることが重要です。

日陰があるか

テラス・ウッドデッキを日当たりの良い場所につくっても、夏に暑すぎて使えません。

屋根、オーニング、シェード、樹木などを組み合わせ、実際に庭を使いたい時間帯の日差しを確認します。

近所の視線が気にならないか

庭全体を高いフェンスで囲わなくても、椅子に座ったときの目線だけを隠す方法があります。

必要な場所に必要な高さの目隠しを設ける方が、風通しや開放感を残しやすくなります。

片付けや掃除が負担にならないか

屋外家具を毎回物置から出す計画では、使うまでの準備が面倒になります。

雨に強く、軽く移動できる家具を選んだり、テラスの近くに収納をつくったりまたは、ダイニングチェアを使う時だけ出すのも、庭を日常的に使うための設計です。

愛犬の庭にも、人が座る場所が必要

自宅ドッグランというと、犬が走れる広さや地面、フェンスの高さに目が向きがちです。

もちろん、脱走防止、足腰への負担、排水、暑さ対策は欠かせません。

ただ、犬のための庭だからといって、人の居場所を後回しにすると、庭そのものが使われなくなることがあります。

犬は、庭に出ればずっと走っているわけではありません。

匂いを嗅ぐ。

周囲を確認する。

木陰で休む。

飼い主を見る。

飼い主の近くで寝転ぶ。

そのような時間も、犬にとって大切な庭での行動です。

飼い主が木陰やテラスでコーヒーを飲み、その近くで愛犬が匂いを嗅いだり休んだりする。

人と犬が、それぞれ好きなことをしながら同じ空間にいられる。

そのような庭であれば、特別に「犬を遊ばせる時間」をつくらなくても、日常生活の中で庭へ出る機会が増えていきます。

ドッグランをつくるだけでなく、

「飼い主はどこで愛犬を見守るのか」

「犬はどこで休むのか」

「夏はどこに木陰ができるのか」

まで考えることが、愛犬と長く使える庭につながります。

日本の庭に必要なのは、庭で過ごす見本

ヨーロッパの街では、テラス席で過ごす人の姿を日常的に見ることができます。

外でコーヒーを飲む。

家族や友人と話す。

何もしないで街や緑を眺める。

ボーとする

その姿自体が、

「外では、こうやって過ごせばいい」

という見本になっています。

日本では、整った庭の写真はたくさん見かけますが、完成した庭で家族がどのように過ごしているのかまで見る機会は、まだ少ないように感じます。

庭を広く見せること。

豪華な材料を使うこと。

手入れをゼロに近づけること。

それだけが、良い庭ではありません。

小さな庭でも、椅子が置け、適度な目隠しと木陰があり、そこから好きな景色が見えれば、家の中とは違う居場所になります。

庭づくりは「屋外で過ごす時間」から考える

庭づくりでは、最初に商品や素材を選びたくなります。

ウッドデッキにするか。

タイルにするか。

人工芝にするか。

天然芝にするか。

しかし、その前に考えていただきたいのが、

「その庭で、誰と、どのような時間を過ごしたいか」

ということです。

朝、庭でコーヒーを飲みたい。

夕方、愛犬が遊ぶ姿を見ていたい。

休日に家族で食事をしたい。

一人で植物を眺めたい。

友人を招いて話をしたい。

瞑想したい。

ヨガをしたい。

過ごしたい時間が決まれば、必要な広さ、床材、日陰、植栽、目隠し、照明、収納も具体的になります。

ヨーロッパのテラス文化から学べるのは、海外風のデザインや家具だけではなく

庭は、生活の余った場所ではなく、家から一番近い自然、人生の時間を過ごす場所として考えること。

日本の気候や住宅事情に合わせながら、その家族と愛犬に合った「外の居場所」をつくる。

それが、完成後も長く使われる庭づくりにつながると思います。

どこかでテラス席を見つけたら、ぜひ過ごしてみてください。屋内との違いを感じてみてください。

ビアガーデンでもいい

魚〇郎のバーベキューでもいい

長島のアウトレットにロサフィールドでもいい

庭が回復装置となり、テラス文化が広がる事を願っています。

 

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