2026.07.05
なぜ曲線の庭は落ち着くのか|オルムステッドに見る、心が整う庭の考え方
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投稿日:2026.07.02 最終更新日:2026.07.02
50代、60代になると、定年後やリタイア後の人生について考える機会が増えてきます。
定年を「人生の終わり」ではなく、第二の人生のスタートと捉え、そのタイミングで庭をリフォームしたいと相談に来られる方は、実際に少なくありません。
マイホームを建てた当時は、若く、子育てを中心に考えた庭でした。
芝生に生垣、天然木のウッドデッキ
イングリッシュガーデンが日本に入ってきた「ガーデニングブーム」の時代には、芝生や花、コニファー、ハーブなどを取り入れた、イギリス風の庭も多くつくられました。
今振り返ると、庭の手入れが好きで、時間をかけられる人に向いた庭だったと思います。
もちろん、今も庭いじりが趣味で、植物に触れていると時間を忘れられるという方は、その庭を大切に育てていけばよいでしょう。
しかし現実には、仕事や子育てに追われて手入れができず、芝生や生垣が荒れ、天然木のウッドデッキが朽ちてしまった家も少なくありません。
すでにウッドデッキを撤去し、庭をほとんど使わなくなったという方もいます。
私が考える「50代・60代の庭」とは、50代、60代だけのための庭ではありません。
その先の70代、80代まで、無理なく、心地よく過ごすための庭です。
若い頃のように流行や見た目だけでつくるのではなく、これからの暮らし方を考えてつくる必要があります。
大切なのは、何を植えるか、どんな材料を使うかよりも、
「これから、この庭でどう過ごしたいのか」
という問いです。
例えば、
朝陽を浴びながらコーヒーを飲む。
庭の椅子に座って本を読む。
好きな音楽を聴く。
夫婦で話をする。
子どもや孫が集まり、食事をする。
庭を、家の外にある「第二のリビング」として使う。
これからの庭づくりには、そんな新しいライフスタイルに合わせた考え方が必要です。
ここで一度、考えてほしいことがあります。
なぜ、「庭」なのか?
それは、庭が家から一番近い「自然」だからです。
今回、世界各地の街や住宅地を見て、改めて感じたことがあります。
緑の多い住宅地には、落ち着きや品格があり、人がゆっくりと過ごせる空気がありました。
アメリカでは、樹木や緑の多い地域は住宅の価値にも良い影響を与え、適切に管理された緑は地域の安全性にも関係すると、現地の人から聞きました。
実際に米国では、街路樹や樹冠の多さと住宅価格、犯罪発生率との間に一定の関連を示した研究があります。
それでも、緑に囲まれた場所で過ごすことが、人間にとって心地よく、豊かな時間につながることは、国が違っても共通しているように思います。
世界を回り、緑の多い地域と少ない地域の両方を見てから日本へ戻ると、日本の住宅地には緑が少ないと強く感じました。
もちろん、敷地の広さ、落ち葉への苦情、管理の問題、住宅の密集など、日本には日本の事情があります。
しかし、周囲に緑が少ないまま、自分の敷地にも植物を植えなければ、窓から見える景色は、隣の建物、塀、電柱、看板といった人工物ばかりになります。
近所の木々や山並みを借景として取り込めない場所では、自分たちの手で適度な緑をつくる必要があります。
私が考えるリタイア後の理想の庭は、まず管理が無理なく続けられることです。
ただし、「管理を楽にすること」と「植物をすべてなくすこと」は違います。
草取りが大変だから全面をコンクリートにする。
落ち葉が嫌だから木を一本も植えない。
それでは手入れは減っても、庭で過ごしたくなる理由まで失ってしまいます。
大切なのは、管理できる量まで植物を絞り、適度な緑を残すことです。
自分たちで無理なく手入れできる植物を選ぶ。
高い場所や危険を伴う大きな木の剪定は、専門業者に任せる。
足腰が弱くなったときのことを考え、段差や滑りやすい場所を減らす。
日陰や風の通り道、座る場所をつくる。
将来の体力まで考えながら、「自分で楽しむ部分」と「専門家に任せる部分」を分けておくことが重要です。
庭の手入れも、暮らしの楽しみにする庭は、完成した瞬間がゴールではありません。
植物は伸び、花が咲き、葉が落ち、季節ごとに表情を変えます。
その変化に少し手を加えながら、庭を育てていく。
庭の手入れを、単なる「面倒な作業」と考えるのではなく、身体を動かし、季節を感じ、植物の変化を楽しむ時間として捉えてほしいと思います。
そのためには、まず緑や植木、植物を少しずつ好きになることです。
難しい知識を覚える必要はありません。
新しい芽が出た。
花が咲いた。
鳥が来た。
木陰が涼しかった。
そんな小さな変化に気づくだけでも、庭との付き合い方は変わっていきます。
今まで家族や仕事のために頑張ってきた50代、60代の方にこそ、これからは自分のために庭を使ってほしい。
庭を老後の負担にするのではなく、毎日の楽しみや生きがいに変えてほしい。
朝、少し庭に出てみたくなる。
椅子に座って、ゆっくり過ごしたくなる。
子どもや孫が遊びに来たくなる。
そんな庭が、これから始まる第二の人生を、少しでも豊かなものにしてくれるはずです。
庭は、家から一番近い自然です。
その自然と無理なく付き合いながら、庭で過ごす時間を楽しむ人が一人でも増えること。
そして、今まで頑張って働いてきた方々が、庭とともに豊かな第二の人生を過ごせることを、私は心から願っています。
2026.07.05
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