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About Horio Souken
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五感の庭|センサリーガーデン実際に見学して学んだこと

庭は、見た目を評価する場所ではなく、身体全部で感じる場所である。

シカゴでのホームステイ中、ボタニカルガーデンと実際の住宅庭を見学しました。そこで、アメリカ人夫婦でガーデナーが教えてくれたのは、『五感で庭を楽しむ』ということ。言葉として『センサリーガーデン』は知っていても、実物を見て、実際に五感を使った楽しみ方を体験することで、初めて深く理解できました。

センサリーガーデンとは何か

センサリーとは『感覚』という意味です。

つまりセンサリーガーデンとは、花や樹木を目で鑑賞するだけではなく、香り、手触り、音、色、味など、人間の五感を使って体験する庭のこと。

ホームステイ先のガーデナーは、こう説明しながら実際に行動で見せてくれました。

香りのする植物に顔を近づけて、花の匂いを嗅ぐ

葉や樹皮に手を伸ばして触れる

風で揺れる植物の音を聞く

その一連の行動こそが、庭を『楽しむ』ということなのだと、そのとき初めて腑に落ちました。

「見た目が美しい庭」から「心が整う庭」へ

私たちは庭を見るとき、無意識に見た目を評価してしまいます。

花がきれい。色の組み合わせが美しい。樹木の形が整っている。写真映えする。

もちろん、美しさは庭にとって重要です。しかし、センサリーガーデンが問いかけているのは、それだけではありません。

この庭に入ったとき、どんな香りがするのか。

葉に触れたとき、どんな感触があるのか。

どんな音が鳴るのか。

その場所にいる人の心が、どう変化するのか。

公式案内でも、シカゴ・ボタニックガーデンのセンサリーガーデンは、急いで通り過ぎる場所ではなく、歩く速度を落として体験する庭として紹介されていました。植物に近づきやすい植栽部分もあり、香りを嗅いだり、触れたりしやすいように工夫されています。

五感で庭を体験する意味

普段の暮らしでは、私たちは多くの時間を室内で過ごしています。

空調で一定に保たれた温度。平らな床。照明。テレビやスマートフォン。

視覚情報は大量に入ってきますが、土の匂い、葉の感触、木陰の涼しさ、風に揺れる植物の音を意識する時間は減っています。

だからこそ、庭へ出る意味があるのです。

花の香りを嗅ぐ。葉を触る。鳥のさえずりや、風が枝葉を揺らす音を聞く。日陰の温度差を感じる。足元の素材の違いを感じる。

こうした小さな刺激が、人間の感覚を日常へ戻してくれます。

シカゴでは、香りだけでなく、樹皮の質感、葉が揺れる音、食べられる植物の味まで含め、感覚を使って庭を体験するプログラムも行われていました。

庭は、植物を飾るための背景ではない。人間が、もう一度自分の身体と感覚を取り戻す場所なのです。

日本の庭は、『見るもの』『触ってはいけないもの』になっていないか

日本には、素晴らしい庭園文化があります。石、苔、水、樹木、余白、見え隠れ。静かに眺め、季節の移ろいを感じる庭には、日本独自の美しさがあります。

一方、一般住宅の庭ではどうでしょうか。

人工芝を張り、アルミフェンスで囲み、樹脂製のウッドデッキをつくり、花壇をなくす。

その庭で何を感じ、どう過ごすかまでは、あまり考えられていないことがあります。

さらに日本では、庭や植物園の植物は『見るもの』『触ってはいけないもの』になりやすいようにも感じます。

もちろん、公共の植物を勝手に傷つけてはいけません。しかし、家庭の庭まで鑑賞専用にする必要はないのではないでしょうか。

葉を触る。花の香りを嗅ぐ。花を摘んで室内に飾る。ハーブを料理に使う。木陰に椅子を置く。

庭は、もう少し人間の生活に近い場所であってよいと思います。

自宅の庭にセンサリーガーデンの考え方を取り入れる

センサリーガーデンをつくるために、広い土地や珍しい植物は必要ありません。

玄関やテラスの近くに、ハーブや香りのある植物を植える。

手の届く高さに、柔らかい葉や特徴的な質感の植物を置く。

風に揺れて音が出る草類を植える。

鳥が来る樹木や水場をつくる。

食事に使えるハーブを育てる。

夏に木陰をつくる。

庭に、裸足で感じられる異なる素材を取り入れる。

小さな庭でも、五感を意識すれば体験は大きく変わるはずです。

重要なのは、植物の種類を増やすことではなく、『この場所で、何を感じてほしいのか』ということ。そこから逆算して庭を考えることが、これからの庭づくりには必要な視点だと思います。

庭は、見せるものではなく、感じるもの

シカゴ・ボタニックガーデンを、アメリカ人のプロガーデナーと歩き、私はセンサリーガーデンの意味を、ようやく身体で理解できました。

庭は、美しい植物を並べる場所ではない。完成写真を撮るためだけの場所でもない。

香り、手触り、音、光、温度、風。そして、そこで過ごす時間。それらすべてを含めて、庭なのです。

長く庭づくりの仕事をしてきましたが、海外へ出て、現地のプロと一緒に庭を歩いたことで、改めて庭の原点を教えられました。

庭は、目だけで見るものではない。人間の身体全部で感じる場所である。

セン サリーガーデンとは、特別な庭ではない。本来、すべての庭が持っていたはずの役割を、もう一度思い出させてくれる庭。

これからの庭づくりは、ノーメンテナンスを目指すだけではなく、管理できる自然を暮らしの中に戻していくこと。丸見えのオープン外構でも、閉じすぎた目隠し外構でもなく、五感で体験できる庭を考えること。

それが、これからの庭づくりに必要な視点だと思います。

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