2026.08.09
犬に「広い庭」が必要とは限らない|大切なのは広さより、どう過ごせるか
「犬を飼うなら、広い庭があった方がいい」 犬をすでに飼っている方、これから犬を迎える方の中には、そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。 確かに、庭が広ければ犬が走れる距離は長くなります。 大型犬や運動量の多い犬種なら、広さが役立つ場面もたしかにあります。 しかし、私は犬と庭を考えるとき、 「庭は広ければ広いほど犬が幸せ」 とは限らないと思っています。 むしろ大切なのは、 その庭…
「庭の手入れが、正直つらくなってきた」 「親の代からある和風庭園、もう誰も見ていない」 「思い切って人工芝にしてしまおうか」
——そんなご相談が、年々増えています。
最初にお伝えしておくと、この記事は「庭を壊してはいけません」という話ではありません。
私たち堀央創建は、庭じまいのご依頼もお受けしていますし、人工芝の工事もしています。
手入れの負担に悩むお気持ちは、現場で34年、庭に関わってきた私が一番よく知っています。
ただ、壊す前に一度だけ、読んでいただきたい話があります。
庭を作る仕事を34年続けてきて、こんなことを言うのは勇気がいるのですが——実は私自身、日本庭園を心から良いと思えない時期が長くありました。
灯篭があって、石があって、松がある。たしかに「和風」ではある。でも、心が動かない。なぜだろうと、ずっと引っかかっていました。
日本庭園を学び直すようになって、少しずつ分かってきたことがあります。
高度経済成長期からバブル期にかけて、住宅ブームの中で大量に作られた「和風庭園」の多くは、本来の日本庭園の設計思想が抜け落ちた、いわば「型のコピー」(※すべてがそう、という意味ではありません) だったのではないか、ということです。
本来の日本庭園には、座る場所から見える景色の設計、余白、借景——「そこで心を整えるための思想」がありました。
しかし記号だけを組み合わせた庭には、それがない。さらに剪定技術の継承が途切れ、手入れが刈り込みだけになると、庭は年々、本来の姿から遠ざかっていきます。
つまり、私たちの多くが見てきたのは、日本庭園の「なれの果て」だったのかもしれません。
美しいと思えなかったのは、あなたのせいでも、日本庭園そのもののせいでもなかったのです。
「手入れが大変だから」——庭じまいの理由として、必ず挙がる言葉です。
でも、34年この仕事をしてきて、私は少し違う見方をしています。
人は、本当に大切なものには、手間もお金も惜しみません。車が好きな人は洗車を苦にしませんし、着物を愛する人は虫干しを欠かしません。手がかかるからこそ大事にする、ということすらあります。
だとすれば、庭が壊される本当の理由は、こうではないでしょうか。
「手入れが大変だから」ではなく、「手入れしてまで残したいと思える時間を、その庭で過ごしてこなかったから」
眺めることすらなく、ただ「家の外にあるもの」だった庭。縁側でお茶を飲むことも、子どもや犬が駆け回ることもなかった庭。暮らしの時間が流れていない庭は、使われない部屋が物置になるのと同じように、いつしか「管理負担」に変わってしまうのです。
アメリカ・カリフォルニアに「Golden Door(ゴールデンドア)」という滞在型のリトリート施設があります。世界の第一線で働く人たちが、疲れた心と体を整えるために1週間滞在する、予約の絶えない場所です。
その敷地の中心にあるのが——日本の旅館をモデルにした建物と、日本庭園です。
彼らがそこに求めているのは、豪華さではありません。静けさ、自然、何もしない時間。情報とスピードに疲れ切った現代人にとって、庭は「回復の装置」なのです。禅やマインドフルネスが世界に広まった流れの先に、日本の庭がある。
本家の日本で庭が次々と壊されている一方で、海の向こうでは日本の庭が人を癒している。(私自身、世界を巡る旅の中で、この「逆転」を肌で感じる場面が何度もありました)
アメリカ人で友人のGina&Edが連れて行ってくれたシカゴの植物園。なんとそこには日本庭園、枯山水、あずま屋、池、お茶室、路地庭園があり、多くのアメリカ人が見学や教育を受けていました
また、アメリカ人は日本庭園を何度も何度も「ビューティフル!ワンダフル!」と言ってくれ、日本庭園を説明すると「ワーオ!」とすごく興味深く聞いてくれました
この事実を知ったとき、私は庭を作る人間として、立ち止まらざるを得ませんでした。
選択肢① 閉じる それも立派な選択です。ご事情も体力も、ご家庭それぞれ。庭を愛してきた私たちだからこそ、木や石の行き先まで考えた、丁寧な庭じまいができます。
選択肢② 小さくする 全部を壊さず、木を1本、石を1つ、腰掛ける場所を1つだけ残す——「庭の減築」という道があります。手入れの負担は一気に減り、それでいて朝の深呼吸の場所は残ります。
選択肢③ 過ごせる庭に作り直す 犬と遊ぶ、お茶を飲む、週末に火を囲む。「使い道のある庭」は、不思議と負担になりません。手入れが「作業」ではなく「楽しみ」に変わるからです。
どれが正解かは、庭と、そこでの暮らしを見てみないと分かりません。だからこそ、壊すと決める前に、ご相談ください。
本当に心が落ち着く庭とは何か。それは普通の家庭の庭で再現できるのか。正直、私にもまだ答えはありません。だからいま、学び直し、確かめている途中です。その過程も、このブログで少しずつお伝えしていきます。
庭じまいを迷ったら、壊す前に、一度だけご相談ください。 「壊す」「残す」「作り直す」——どの答えになっても、私たちは全力でお手伝いします。
2026.08.09
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