2026.07.05
なぜ曲線の庭は落ち着くのか|オルムステッドに見る、心が整う庭の考え方
庭は、ただデザインが美しければよいのか 庭や外構は、家の見た目を整えデザインするのではなく 心を整える場所でもあると思います そのことを考えるうえで、 個人庭でもとても参考になりますのでよかったら最後までお読みください フレデリック・ロー・オルムステッド ニューヨークのセントラルパークを手がけた人物で 「アメリカのランドスケープ・アーキテクチャの創始者」 とも呼ばれています。 シ…
ヨーロッパの庭と聞くと、英国のイングリッシュガーデンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
一方で、オランダやドイツ、フランスなど、イギリス以外の国にある一般住宅の庭については、日本ではそれほど多く紹介されていません。
今回、オランダ・アムステルダムを訪れ、実際に一般住宅のお庭を見学する機会がありました。
観光施設や歴史的な庭園ではなく、現地の人が日常生活の中で使っている住宅の庭です。
外構・エクステリア・庭づくりに長く携わってきた立場から、アムステルダムの庭を見て感じたこと、日本の住宅庭との共通点や違いについてご紹介します。

滞在中のアムステルダムは、気温も湿度も比較的過ごしやすく、庭に出ていても大きな負担を感じませんでした。
私が訪れた環境では、蚊もほとんど確認できませんでした。
日本の梅雨時期のような蒸し暑さが少なく、
「この気候なら、庭で過ごしたくなるだろうな」
「家の中だけでなく、庭にも居場所をつくりたくなるだろうな」
と感じました。
庭の使われ方は、デザインや施工方法だけで決まるものではありません。
気温、湿度、日照時間、風、雨、虫の多さなど、その地域の気候条件も大きく影響します。
※気候や虫の発生状況は、訪問時期や場所、その年の天候によって異なります。
今回見学したアムステルダムの住宅庭には、主に次のようなものが使われていました。
石像を除けば、日本の一般住宅の庭でも使われているものと、それほど大きく変わりません。
タイルを敷き、芝生をつくり、植物を植え、隣地との間に目隠しフェンスを設ける。

庭を構成している材料だけを見ると、日本の庭との共通点が多くあります。
しかし、実際にその庭へ入ってみると、空間の感じ方には違いがありました。
特別に高価な材料を大量に使用しているわけではありません。それでも、庭の中にいると、とても居心地が良いのです。
居心地の良さを生み出していた大きな理由の一つが、敷地の周囲にある樹木です。
隣家や周辺に育っている大きな木が借景となり、自分の敷地だけで庭が完結しているようには見えません。
自宅の庭に植えられている植物の向こう側にも緑が続き、庭全体が大きな自然に包まれているように感じられました。
日本の住宅庭では、自分の敷地内だけで目隠しや緑を完成させようとするケースが多くあります。
しかし実際には、隣地の樹木、道路沿いの街路樹、近くの公園、山並み、空の見え方なども、庭の景観を構成する要素になります。
敷地の外にある風景をどう取り込むか。
反対に、見せたくないものをどう隠すか。
庭の居心地を考えるうえでは、自分の敷地内だけでなく、周辺環境まで見て計画することが重要です。
見学した庭の周囲では、たくさんの鳥が鳴いていました。
「小鳥のさえずりが聞こえる庭」という表現がありますが、まさにそのような環境です。
庭の印象は、目に見えるものだけで決まりません。
鳥の声、木の葉が風で揺れる音、植物の香り、足元の感触、日なたと日陰の温度差なども、庭の居心地に影響します。
樹木や植物が増えれば、鳥や虫などの生き物が訪れる可能性も高まります。
もちろん、生き物が増えることには、良い面だけでなく注意点もあります。
虫が苦手な方もいれば、落ち葉や鳥のふん、植物の管理が負担になることもあります。
それでも、人が自然を感じながら過ごす庭をつくるには、見た目だけではなく、音や匂い、生き物との関係まで考える必要があります。
今回訪れた住宅の庭や、滞在したホテルの庭では、自動灌水設備が設置されていました。
訪問時のアムステルダムは比較的湿度が低く、晴れた日には土が乾きやすい環境だと感じました。
そのため、植栽を維持するうえで、水の管理は重要になります。
自動灌水設備があれば、決められた時間に必要な場所へ水を供給できます。
旅行や長期不在のときにも対応しやすく、水やりにかかる日々の負担を抑えられます。
ただし、自動灌水を設置すれば、植物管理がすべて不要になるわけではありません。
植物の種類、季節、日当たり、土壌、水はけによって必要な水量は異なります。
設備を設置する場合も、庭全体へ一律に水をまくのではなく、植物や場所に応じた計画が必要です。
今回見学した住宅庭は、植物を大量に植えて観賞することよりも、手入れを抑えながら、人が過ごすことを重視してつくられていました。
庭で想定されていたのは、例えば次のような過ごし方です。
庭を外から眺めるだけではなく、庭の中に入り、何かをすることが前提になっています。
タイルは、椅子やテーブルを安定して置ける場所になります。
芝生は、寝転んだり、裸足で歩いたり、子どもが遊んだりする場所になります。
目隠しフェンスや植栽は、外からの視線を抑え、庭で落ち着いて過ごすために使われます。
物置は、庭で使う道具や家具を収納し、庭を使いやすい状態に保つために必要です。
一つひとつの材料が、単なる装飾ではなく、庭での行動と結びついていました。
住まわれている方は、
「目隠しのために、もう少し木を育てたい」
と話していました。
完成した時点ですべてを完全に隠すのではなく、植物の成長によって、少しずつ庭の落ち着きを高めていく考え方です。
フェンスを高くすれば、設置後すぐに視線を遮ることができます。
一方で、圧迫感が出たり、風通しや日当たりへ影響したりする場合があります。
樹木による目隠しは、完成までに時間がかかり、剪定や落ち葉の管理も必要です。
しかし、季節の変化や木陰、鳥の声など、人工物だけでは得にくい環境をつくれます。
フェンスと植栽のどちらか一方を選ぶのではなく、必要な場所にはフェンスを使い、時間をかけて植物も育てる。
そのような組み合わせも、庭の目隠しを考える方法の一つです。
アムステルダムの住宅庭を見て感じたのは、庭づくりの基本的な考え方に、大きな国境はないということです。
大切なのは、
「庭をどう使いたいのか」
「庭で誰と、どのような時間を過ごしたいのか」
をある程度明確にし、それに必要な空間や設備を計画することです。
これは、オランダでも日本でも変わりません。
ところが、日本の住宅庭についてご相談を受けていると、
「雑草が生えないようにしたい」
「外から見えないようにしたい」
「できるだけ手入れを少なくしたい」
というご要望を聞くことが多くあります。
これらは、どれも大切なご要望です。
雑草、視線、管理の負担といった不便を解消しなければ、庭を快適に使うことはできません。
ただし、不便を解消することだけを目的にすると、庭が防草シートやコンクリートで覆われ、何もする場所が残らないこともあります。
庭づくりでは、最初に困りごとを整理します。
そのうえで、もう一歩先まで考えることが重要です。
例えば、同じ「目隠しが欲しい」というご要望でも、目的によって計画は変わります。
庭で食事をしたいのか。
洗濯物を見えにくくしたいのか。
子どもや犬を安心して遊ばせたいのか。
窓を開けたときに、室内が見えないようにしたいのか。
目的が分かれば、目隠しが必要な位置、高さ、長さ、素材も決めやすくなります。
日本の住宅庭が抱えている課題の一つは、庭で過ごす良さを、まだ多くの人が十分に体験していないことかもしれません。
庭は、広さや豪華さだけで価値が決まるものではありません。
小さな庭でも、椅子を置ける場所があり、外からの視線が適度に遮られ、風や緑を感じられれば、日常の中に新しい居場所をつくれます。
雑草対策や目隠し、手入れの軽減は、庭づくりのゴールではありません。
それらは、庭で快適に過ごすための土台です。
庭をつくるときには、
「何を設置するか」
だけでなく、
「完成した庭で、何をして過ごしたいか」
から考えてみてください。
庭の使い方が明確になれば、必要な広さ、床材、植栽、目隠し、日陰、収納、照明なども具体的になります。
私たちは、外構や庭の見た目を整えるだけでなく、その庭で過ごす人の生活や行動まで考えた庭づくりを大切にしています。
庭の雑草、目隠し、管理の負担にお悩みの方も、その不便を解消した先にある「庭で過ごしたい時間」から、一緒に計画していきましょう。
2026.07.05
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